白内障手術を受けるタイミングはいつが良いのか？〈横浜市　梅の木眼科クリニック〉 | 横浜市から眼科医による目の健康のためのお役立ち情報をブログで発信

白内障は目の中の水晶体が濁ってくることにより、みづらくなる病気です。 白内障についてはこちらに詳しく説明していますのでお読み下さい。

誰でも加齢性変化で少しづつ白内障は出てくるものです。そのため自覚症状はなくても眼科を受診した際に”白内障ですね”と言われてショックを受ける方も少なからずいらっしゃると思います。

白内障は手術でしか治せないものですので、白内障＝手術と直結してしまうのですが、当院の外来には、他院で白内障手術を勧められたが、実際に手術をした方が良いか迷っている方や、実際いつ手術をするのが良いか相談にいらっしゃることがよくあります。

手術をするタイミングは白内障の状態やその方の生活状況によって早くやった方が良いかどうか大きく変わります。

まずは急いだ方が良い場合です。 これは目の形状のため狭隅角となっており急激に眼圧が上がってしまう急性緑内障発作を起こしやすい状態の場合です。（詳しくは以前のブログをお読み下さい）緑内障発作はよく夜中に頭痛、吐き気をきたしてしまうご病気です。放置すると失明につながるものでもあるので、予防的に手術をお勧めさせていただくことが多いです。また、水晶体を支えているチン小体が弱っていることが診察時より疑われる場合には、手術が大変難しくなる場合があるので早めの手術をお勧めさせていただきます。

次に早めに手術をお勧めすることが多い場合です。 緑内障や網膜色素変性症の方で、視野が進んできた場合や、黄斑変性や糖尿病網膜症など他のご病気がある場合です。白内障手術をする際に、少なからず眼圧の変動や炎症が起きます。これによって緑内障が進行していると、視野障害が進行してしまう場合があります。緑内障は神経が痛む病気ですので、進行してくると手術のストレスで急激に視野が悪化する場合があります。ですので早めの手術をお勧めすることが多いです。

また、現在白内障手術と同時にMIGS（低侵襲緑内障手術）を行うことができますので、緑内障点眼をたくさん使用している方には同時手術をお勧めすることがあります。

その他、炎症が思いのほか遷延すると、網膜の状態が悪化する場合があります。網膜の状態が悪くなるとそちらの影響で視力が悪くなったり、網膜の治療のために抗VEGF抗体の注射やレーザー治療を急いでしなければならなくなることがあります。レーザー治療が必要だけれども、白内障が強くなってきて治療の妨げになる場合も白内障手術を早期に勧めることがあります。

上記に関しては、眼科医から見ての急いだ方が良い場合です。これらの場合は比較的強く白内障手術をお勧めしています。 逆に言うと、それ以外の方はご自身の自覚症状やご家庭の都合で手術のタイミングを決定して良いと思います。

白内障の自覚症状は人それぞれ違います。かなり進行して、視力が低下してきても、生活に困ることはない方もいらっしゃれば、軽い白内障だけれども眩しさが強くて運転時に困る方もいらっしゃいます。

また、運転免許の更新ができなくて早期に手術をしないと生活に困ることもあります。この場合は特に期限が決まっているので、なるべく更新期限内に手術をするようにしていますが、どうしても間に合わない場合は６ヶ月以内であれば再発行を受けることができるので、極力免許の失効期間が短くなるように予定させていただいています。

最近の傾向ではありますが、多焦点眼内レンズの発展に伴い、老眼の治療を含めて早めに手術を考えられる方も増えてきています。今まで老眼鏡を使用していたのが煩わしく感じられていたのがなくなって便利になったとのお声はよくいただくので、多焦点眼内レンズの特性をわかって手術をされると、ご満足度も高いと思います。

眼内レンズメーカー各社、多焦点眼内レンズの弱点を改善しようとさまざまな工夫を行なっており、グレア、ハローといった術後の煩わしさが少ないようなレンズも開発されてきていますのでご希望の方は外来診療時にご相談ください。

基本的に白内障手術は急ぐ場合を除けばご希望次第と書いてきましたが、あまりに白内障が進行すると手術は難しくなってしまい、合併症の起きる可能性が高くなってきます。ですので、ある程度白内障が進行した時には体調やご家庭の状況を鑑みて、手術をする時期をご相談すると良いのではないでしょうか？

以上のものはあくまで私見であり、色々なご意見があると思います。一番大切なのは、ご家庭のことや体調などまで相談して手術のタイミングを一緒に考えていけるような関係性を築いて安心して手術を受けられることかな？と思っています。