加齢黄斑変性治療の次なる一歩〜ラニビズマブポートデリバリーシステム〜〈横浜市 梅の木眼科クリニック〉

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一般眼科

 コロナも再度猛威を震い始めましたね。暑かったり、ジメジメしたりのなか、マスクもしないといけない状況でストレスも溜まると思いますが、水分補給を忘れず、体調に注意していきましょう。

かく言う私も外来の最中、マスクをしていると水分補給が億劫になることがあり、注意したいと思います。


 さて、今日の話は加齢黄斑変性症の治療についてです。先日新たな治療薬バビースモについてブログに書きました(詳しくはこちらよりお読み下さい。)が、今回は以前より使用されているルセンティス®︎ (一般名:ラニビズマブ)という薬剤の投与方法についてのお話になります。


 加齢黄斑変性の治療で色々な種類の薬剤が出てきていますが、基本的に投与方法は変わりなく硝子体内注射を行います。注射自体はそれほど痛いものではないのですが、薬剤の効果が減弱してくると再度注射を打たなければなりません。一回注射されるのも嫌と言う方が多い中、多くの方が2・3ヶ月に一度くらい注射をしている現状です。患者様のご苦労は計り知れないところです。しかし、注射をしないで眼内に出血をきたすとさらに視力が落ちてしまうのでしないわけにはいかない大切な治療です。

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注射を定期的にしないといけない治療で有名なものでは糖尿病があります。糖尿病はインスリンというホルモンを注射することで、血糖値を下げる治療です。こちらは患者様がご自身で皮下に毎回注射していきます。しかし、1日に何度も注射するのが難しかったり、血糖が極端に上下してしまうことがあります。

 こういう方のために持続皮下インスリン注入療法というものが取り入れられています。これは、お腹に針を刺したままの状態にして、ポンプでインスリンを持続的に注入していくというものです。


黄斑変性治療でも毎回注射しないで済む様にできないか?と考えられたのが、今回お話ししたいポートデリバリーシステムという投与方法です。

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 どんなものか簡単にいうと、薬剤を投入するポートを眼内に埋め込み、そこに徐放剤(イラストの先端の黒い部分)を入れておくと、徐々に薬剤が眼内にしみだしてくれるという仕組みです。これにより、半年程度の薬剤の効果が期待される様です。通常の硝子体注射は1−3ヶ月ごとに注射されている方が多いので、半年間処置がいらないのは大きなメリットとなると思います。


 では、薬の効果が切れた時はどうするのでしょうか?


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 薬の効果が切れてきた場合は写真のようにポートの中に薬剤を補充してあげれば良いとのことでした。硝子体注射と同様の処置で良い様です。


 アメリカではFDA(食品衛生局)の第3相試験が行われており、大きな障害は認めていない様です。また、治療効果も硝子体注射と遜色がないと言われています。

 コスト面についても、年間で見ると、月に1回注射するよりは安く、月に2回注射よりもやや高額になる様ですが、ポート挿入の手術がおそらく高価なので、長い目で見ると経済的な負担も軽くなるのかもしれません。また、日本での保険適応となる場合、どの様になるのかも不明です。

 ですが、片眼にポート、片眼は注射されていた方達の9割はポートの方が好ましいという満足度だったそうです。


 投与方法としては画期的だなと思う一方、いくつか懸念点があるように私は思います。


 一つ目はポートを挿入できる施設がやや限られる様に思えます。

白眼(強膜)の部分は血管が豊富なため、その部位を止血して挿入しなければなりません。手技的にはそれほど難しくはなさそうですが、普及するのには時間がかかりそうです。また、薬剤の挿入もできる施設が限られてしまいそうな気がします。


 二つ目は懸念というか今後の展望としての希望ですが、抗VEGF抗体には現在五種類の薬剤があります。今回報告されたのは、ラニビズマブという薬品での検討でしたが、現在黄斑変性症の方で多く注射されているのはアイリーア®️ という薬剤だと思います。病状に応じて使い分けたい身としては、同じポートから、薬剤を投与できる様に、各社の垣根を越えて新たな投与方法の確立をしてくださる様期待したいと思います。ポートの種類が違うから、他の薬剤は注射ですとは言いたくないですね・・・。


何にせよ、何年も注射をしてきている患者様にとってはとても有益な治療法だと思うので、今後の成果が楽しみです。


 梅の木眼科クリニックでは、病状に合わせて各種抗VEGF抗体の硝子体注射をおこなっております。横浜在住の方はもちろんのこと、遠方の方でもご相談に乗ることが多く、必要があれば、当日の注射もお受けしております。もしお困りの方、ご相談希望の方がいらっしゃしましたらご遠慮なくご連絡ください。





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梅の木眼科クリニック

住所:神奈川県横浜市保土ケ谷区西谷1-25-21 ポンデロッサ西谷1F・2F

電話番号:045-371-2666

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