白内障手術前に”前立腺のお薬を飲んでいませんか?”と眼科医が気にする理由

query_builder 2022/03/22
白内障

  眼科の手術を受ける際、術前検査だったり、手術を予約した時であったりにお薬の確認があると思います。その理由には幾つかあります。


 まず第一に、どのようなお薬を飲まれているかによって、全身のご病気があるのかが読み取れます。白内障手術は10分程度で終わりますし、その他の眼科の手術でも1時間を超える手術はそう多くはないので、その間に何かお体の調子に変化が起きる可能性というのはそう高くはありませんが、お顔の上に清潔な布(ドレープ)をかけて行うため、手術の最中の顔色や呼吸の状態が分かりづらくなってしまいます。もちろん術中に血圧を測ったり、酸素飽和度を測定したりとするのですが、やはり事前に注意が必要な方や、手術中に緊張で血圧が急激に上昇してしまう方など前もってわかっている方が、何かあった時の対処が早くなるからです。


 第二に、手術の際に使用する薬剤が使用できるか、もしくは飲み合わせや重複したお薬が出ていないかということにも注意しています。

 例えば、抗生剤の内服薬や鎮痛薬と言ったものが、他のかかりつけの先生が処方してくださっている場合があります。その際には、当院の処方薬を飲んでいただくのか、それとも現在のお薬を継続していただくのかを考慮したりする必要があります。

 また、お飲みのお薬の中で併用してはいけないお薬を飲まれていたりすることもときにあるためです。 これは手術に限らず通常の外来でも言えることですので、現在処方されているお薬はお薬手帳などにまとめて、必ずわかるようにしておいた方が良いでしょう。


 ここまではあくまで一般的な話になります。白内障手術はもちろん眼科の多くの手術において、手術中に内服しているからできないというものは少なくとも当院ではありません。しかしながら、眼瞼下垂などまぶたの手術の際は出血が止まりづらいと時間がかかってしまったり、術後の腫れの原因となったりするので、休止できるのが好ましいです。

 また、白内障手術の際にこれだけは気をつけたいというお薬があります。それが前立腺肥大症頻尿治療に使用されるお薬の服薬歴です。 製品名で言うとユリーフ®︎やハルナール®︎と言った薬になるのですが、α1遮断薬と言われる薬剤によって虹彩が薄くペラペラになってしまうことがあります。これを術中虹彩緊張低下症候群(IFIS:Intraoperative Floppy Iris Syndrome)と呼びます。軽度のIFISであればやややりづらいな程度で手術は終了するのですが、白内障を吸い取りたいのに吸引口に虹彩が引き込まれてしまったり、虹彩が切開した傷に入り込んだりすると手術が大変やりにくくなる他、虹彩を傷つけると手術中の痛みが強かったり、瞳孔が収縮してしまい、どんどん術野が狭くなってしまうという横浜のいや、全国の白内障サージャンであれば誰もが嫌がる状態をきたすことがあります。



 内服していたら手術はできないのか?と言われればそう言うわけではありません。前立腺のお薬を飲んでいれば必ず発症するわけでもなく、また、服薬を休止して頂いたからといって、起こらなくなるものでもないので、発症するのは致し方ないのですが、手術前にわかっていれば、手術時の吸引力を低くして虹彩を吸引しないようにして、吸引の効率を普段よりも下げて、安全性を普段よりさらに重視するような戦略を練ったり、散瞳薬を眼内に注入したりすることで瞳孔の大きさを保つようにしたりといった準備をしておくことができたりします。


 このような理由から手術前の内服薬、特に抗凝固剤やα1遮断薬の内服歴について眼科手術で気にするするべきものなのです。  

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梅の木眼科クリニック

住所:神奈川県横浜市保土ケ谷区西谷1-25-21 ポンデロッサ西谷1F・2F

電話番号:045-371-2666

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